抄録
目 的
フリースタイル分娩の施設内導入を推進するために,フリースタイル分娩の導入施設および未導入施設の勤務助産師の推進に対する考え方と,導入への問題点を明らかにすることを目的とする。
対象と方法
フリースタイル分娩の導入施設16施設,未導入施設20施設の病院勤務助産師367人を対象とし,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,年齢や経験年数,現施設での経験年数,フリースタイル分娩の実施の程度・経験,促進・導入意思,フリースタイル分娩による産婦・胎児の状態および分娩進行状況,分娩環境や産科的な医療介入等への考えを12項目,助産技術への不安である。両施設の助産師の認識の差や共通する因子,関連性の高い因子に関して相関分析,差の検定には,順位データに対してMann-Whitney U test,Kruskal-Wallis testを実施した。
結 果
導入施設において,フリースタイル分娩を128人(65.6%)の助産師が実施している。また,未導入施設の助産師の160人(93.0%)がフリースタイル分娩を良いと考えている。しかし,導入意思があるのは128人(74.5%)であり,導入施設では促進意思が166人(85.5%)に留まった。導入施設において,フリースタイル分娩を行う上で最も問題となるのは「助産技術:37人(34.9%)」であり,未導入施設では「医師の協力と分娩方法のルーチン化:22人(40.7%)」であった。「施設設備や分娩環境,人的な問題(導入施設:27人,25.5%,未導入施設:18人,33.3%)」がこれらの問題に続いて示された。フリースタイル分娩の促進・導入意思は,助産技術の不安や介助経験に関連した見解差を認めた。
結 論
娩出期のフリースタイル分娩の実施率が低いことから促進意欲を制限する要因があることを示した。導入施設においては,研修会や助産技術の向上,業務改善を行い,日常業務において不安が軽減できる取り組みや,産婦に提供できる助産に,医師や看護職者間の考え方の一貫性や方向性をもつことが必要である。フリースタイル分娩の実施において,生理的な効果の理解と緊急時や医療介入の手順など十分に話し合い,組織的な対応を可能にすることが重要であると考える。