2016 年 91 巻 2 号 p. 74-78
ダイダイサラゴケ科ダイダイサラゴケ属地衣類のCoenogonium moniliformeジュズスミレモモドキ(新称)が日本で初めて福岡県福岡市の住宅地の石垣上で発見された.本種は北米,南米,アフリカ,オーストラリア,アジア(ネパール)から報告されているが,地衣体が自由生活の糸状体緑藻類のスミレモ類と見間違えやすく,子器も小さく淡黄色で目立たたないため,世界での採集事例も多くない.これまでに生葉上および樹皮からのみ採集されてきたが,今回世界で初めて岩上に生育していることを確認した.ジュズスミレモモドキの地衣体はフェルト状,子器直径は最大0.45 mm,子嚢胞子は大きさ8‒14 × 3‒5 µm,共生藻はスミレモ科の Trentepohlia monileジュズスミレモ(新称)であった.藻体は細胞が数珠状に連なり,地衣化状態では細胞はほぼ球形で径16‒22 µm,培養状態では長円形から樽型で20‒30 × 12‒16 µmであった.ジュズスミレモを共生藻に持つダイダイサラゴケ属地衣類は本種のみであり,近縁種から容易に区別できる.