2022 年 64 巻 1 号 p. 33-39
探究活動において,得られた結果は客観的に分析しなければならない.特に自然科学などにおける探究活動では,調査や実験で得られたデータにばらつきがあり,結果の捉え方が問題となることも少なくない.一方,生徒の探究活動では,得られた結果を客観的に捉えず,自らの仮説に合致するような解釈や実験者の都合の良い解釈が散見される.実験結果は同じであるにもかかわらず,主観的な判断により異なる結論が導かれる探究は,サイエンスではない.そこで,数値データを用いる探究活動の基礎知識として,統計学的な分析により,結果をより客観的に解釈する方法を紹介した.統計学的手法を知ることにより,主観的な判断に陥らない探究活動の進め方を身につけさせるものである.統計的手法を生徒たちに体験させるため,タマネギの鱗片葉を材料にして,中心部の葉と外側の葉における細胞の長径と核の長径をそれぞれ10個ずつ顕微鏡下で測定を行った.これらのデータを生徒にt検定を用いて分析させ,併せてt検定の簡易な説明もおこなった.ほとんどの生徒は,細胞の長径については有意な差が得られたが,核については有意な差が認められなかった.少数の生徒は異なる結果となった.生徒は,統計処理を行った結果に基づき,細胞や核の選び方,サンプルサイズの適切さについて考察し,客観的な評価としての統計的手法の重要性を意識できるようになったと考えられる.本研究の実践を通して,生徒は統計学的検定に興味をもつようになったことが示唆された.