バイオフィードバック研究
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Print ISSN : 0386-1856
シンポジウム
クリニックでのオンライン診療とバイオフィードバックの可能性
竹林 直紀中川 朋
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2021 年 48 巻 2 号 p. 59-66

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抄録

 COVID-19による感染症対策として隔離や自粛などが実際されるに伴い,オンライン診療やオンラインカウンセリングなどの遠隔医療が広がりつつある.コロナ禍でも身体的・心理的な治療やケアを必要としている人達にとっては,このようなオンラインでの診療やカウンセリングなどの遠隔によるアプローチは,対面での治療が難しい場合でも医療サービスへのアクセスを維持することができる.しかし,これらの遠隔医療においては,生理学的検査などによる身体のリアルタイム情報は,現状ではほとんど利用できていない.本稿では,遠隔医療においてバイオフィードバックを併用することによる利点について,3つの臨床実践例を提示しながら述べる.1)スマホアプリと連動した,酸素飽和度を測定するパルスオキシメータによる心拍変動バイオフィードバックは,自律神経バランスを整えることで,コロナ禍でのストレス軽減や免疫機能のサポートが期待できる.また,「無症候性低酸素症」の早期発見により,COVID-19の症状の進行や重症化の予防も可能となる.2)米国小児科学会が,レベル1のエビデンスがあるADHDの治療法として推奨している「脳波バイオフィードバック(ニューロフィードバック)」においては,セッション回数が多いため,簡易脳波測定装置を使ったホームトレーナーによる自宅での遠隔セッションも併用することで効果を上げている.3)仮想現実(VR)を用いた不安や恐怖に対する遠隔セッションでは,交感神経系の興奮を示す皮膚コンダクタンスも同時測定することで,VRによるストレス場面の曝露強度を調節することができる.バイオフィードバックを併用したVRは,認知行動療法などの心理療法を組み合わせることでさらなる効果が期待できる.バイオフィードバックやVRを用いたオンライン診療/セラピーは,コロナ禍の最中だけでなく,パンデミックが終焉した後においても,さまざまな場所や条件下で有効なアプローチとなると考えられる.

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© 2021 日本バイオフィードバック学会
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