バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
48 巻, 2 号
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招待講演
  • 平木 典子
    2021 年 48 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

     1980年代に始まった心理療法・カウンセリングの理論・技法の整理・統合の試みは,それまでの理論・技法の氾濫による冷戦と単一理論による実践の限界,そして理論・技法の効果研究による共通要因の発見などの影響を受けて開始された.1979年には,SEPI(Society for Exploration of Psychotherapy Integration)が北米で設立され,以後,国際的な理論・技法の洗練を目指した議論が進められた.理論・技法の統合の方法としては,技法的折衷,理論的統合,共通因子によるアプローチ,同化的統合が試みられている.1990年後半に入り,社会構成主義(ポストモダニズム)の多元性と多様性を重視する認識論は,諸理論の共存を重視する理論・技法の洗練を促進し,今や,「カウンセリングの専門家であるセラピスト」と「自分自身の専門家であるクライエント」の協働(コラボレーション)による自己回復の支援が不可欠になった.本論では,心理療法統合の試みと,それに続く協働的,多元的アプローチの展開について論じた.

シンポジウム
  • 中尾 睦宏
    2021 年 48 巻 2 号 p. 55-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

     新型コロナウイルス感染症の世界的流行により,我々の日常生活は劇的に変化した.バイオフィードバックの実践においても,対面の場合はマスク着用や手指清潔を保つなど感染予防対策はこれまで以上に求められるようになった.そういった状況下で,人工知能(AI),情報通信技術(ICT),人工現実感バーチャルリアリティ(VR)などの最新テクノロジーを活用してのバイオフィードバックが注目されている.例えばではあるが,在宅ワークや巣ごもり傾向が高まる中,外出恐怖や登校・出勤困難などのメンタルヘルス問題を抱えている方に対して,在宅しながらVRによる社会訓練を実施し,医療機関とは遠隔診療で治療を進める方法などが可能性として考えられる.2021年6月20日に開催された第48回日本バイオフィードバック学会学術総会2日目では,企画広報委員会による「VRによるオンライン・バイオフィードバックの試み」と題した企画シンポジウムが開かれた.VRによるオンライン・バイオフィードバックの現状や将来ビジョンについて,企画広報委員会メンバーを中心にまとめた議論を本稿では紹介する.

  • 竹林 直紀, 中川 朋
    2021 年 48 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

     COVID-19による感染症対策として隔離や自粛などが実際されるに伴い,オンライン診療やオンラインカウンセリングなどの遠隔医療が広がりつつある.コロナ禍でも身体的・心理的な治療やケアを必要としている人達にとっては,このようなオンラインでの診療やカウンセリングなどの遠隔によるアプローチは,対面での治療が難しい場合でも医療サービスへのアクセスを維持することができる.しかし,これらの遠隔医療においては,生理学的検査などによる身体のリアルタイム情報は,現状ではほとんど利用できていない.本稿では,遠隔医療においてバイオフィードバックを併用することによる利点について,3つの臨床実践例を提示しながら述べる.1)スマホアプリと連動した,酸素飽和度を測定するパルスオキシメータによる心拍変動バイオフィードバックは,自律神経バランスを整えることで,コロナ禍でのストレス軽減や免疫機能のサポートが期待できる.また,「無症候性低酸素症」の早期発見により,COVID-19の症状の進行や重症化の予防も可能となる.2)米国小児科学会が,レベル1のエビデンスがあるADHDの治療法として推奨している「脳波バイオフィードバック(ニューロフィードバック)」においては,セッション回数が多いため,簡易脳波測定装置を使ったホームトレーナーによる自宅での遠隔セッションも併用することで効果を上げている.3)仮想現実(VR)を用いた不安や恐怖に対する遠隔セッションでは,交感神経系の興奮を示す皮膚コンダクタンスも同時測定することで,VRによるストレス場面の曝露強度を調節することができる.バイオフィードバックを併用したVRは,認知行動療法などの心理療法を組み合わせることでさらなる効果が期待できる.バイオフィードバックやVRを用いたオンライン診療/セラピーは,コロナ禍の最中だけでなく,パンデミックが終焉した後においても,さまざまな場所や条件下で有効なアプローチとなると考えられる.

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