抄録
近年,カルチノイドと大腸癌の重複症例の報告は増加しているものの,その数はいまだ少ない.今回,われわれは直腸カルチノイドに対して内視鏡的切除を行い,S状結腸進行癌に対しては根治的切除術を施行した同時性重複症例を経験したので報告する.
症例は79歳の男性.既往に高血圧,気管支喘息,心房細動,糖尿病を併存し加療中.2007年10月便潜血陽性を指摘され,11月前医で下部消化管内視鏡検査を施行し肛門縁から25cmのS状結腸に2型腫瘍を,5cmの直腸(Rb)に径1.5cmのIsp型腫瘍を認めた.ポリペクトミーを施行しカルチノイドと診断された.CT検査では肝肺転移はなく,直腸近傍にリンパ節腫大はなかった.翌年1月当科受診.2月S状結腸切除術を施行し,併存症が多く高リスク症例のため郭清はD2とした.病理組織所見はS,tub2,2型,se,n1,fStage IIIa,根治度Aであった.術後経過は順調で術後13日で退院となり,25カ月経過した現在無再発生存中である.