抄録
大動脈炎症候群を基礎疾患とする大動脈解離に対し大動脈基部置換術を施行した1年半後,中枢側吻合部離開を発症した小児例を経験したので報告する.症例は10歳女児,8歳時基部置換術を施行した.大動脈炎症候群と診断されステロイドを導入した.外来経過観察中胸痛出現し近医受診,心電図で広範なST低下を指摘され当院搬送,CAGで有意狭窄を認めず冠攣縮性狭心症と診断された.翌日胸痛出現とともに心拍停止,PCPSを開始した.CAGで左冠動脈主幹部の拍動性の狭窄を認めた.CTで吻合部離開と診断し緊急手術を施行した.超低体温循環停止とし再開胸,脳分離体外循環を確立した.中枢側吻合部はほぼ半周にわたって離開し左室内腔が露出,大動脈弁輪は融解しておりフェルト帯で補填,再基部置換した.術後7日目にstuck valve,MRのため再手術した.房室ブロックに対し,恒久的ペースメーカー植込み術を施行し第56病日退院した.