日本心臓血管外科学会雑誌
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[成人心臓]
AVR 術後に発症した遅延発症型ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の1例
近藤 康生高島 範之鈴木 友彰浅井 徹
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2018 年 47 巻 3 号 p. 113-117

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抄録

心臓血管外科手術後の患者の約50%にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体が存在するが,その1%程度しか臨床症状を呈するHITを発症しない.特に遅延発症型HITはあまり知られておらず,きわめて稀である.症例は81歳男性で生体弁AVR(Mitroflow 21 mm)+PVI手術を行い,術翌日から術後5日目まで8,000単位/日の未分画ヘパリンを静脈投与していた.経過は順調でワーファリン内服のまま術後15日目に軽快退院した.術後18日目に右不全麻痺を伴う脳梗塞を発症し再入院となった.脳MRIでは多発性梗塞を左半球に認め,心原性脳梗塞が疑われたため15,000単位/日のヘパリンの投与を開始した.術後24日目に血小板の低下(27,000/μl)と造影CTにおいて大動脈遠位弓部の内腔の巨大血栓を認め,HITが疑われた.ヘパリンおよびワーファリン内服をただちに中止し,アルガトロバン投与を開始した.幸い神経学的な障害は残さず回復し,術後58日目に退院となった.現在術後3年となるが大きな問題なく経過している.心臓血管外科術後において説明のつかない血栓症を発症した際は遅延発症型HITを念頭におく必要がある.

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