冠動脈壁の高度石灰化を伴う左冠動脈主幹部に起始する冠動脈嚢状瘤の手術を経験したので報告する.症例は67歳男性,糖尿病性腎症により12年間の透析歴がある.心不全に対し当院循環器内科にて加療および心精査が行われた.冠動脈造影にて左冠動脈主幹部+二枝病変および左冠動脈主幹部の冠動脈嚢状瘤を認め当科紹介となった.治療として冠動脈バイパス術(二枝)および冠動脈瘤切除+冠動脈形成術を予定した.心嚢内に強固な癒着を認め剥離ののち,体外循環補助心停止下に肺動脈本幹を離断し瘤に到達し切開,瘤内に位置する冠動脈主幹部壁に穿孔を認めた.大伏在静脈でのパッチを用いて孔を閉鎖しさらに瘤壁で被い,併わせて冠動脈バイパス術を行った.摘出した瘤壁の病理検査では冠動脈解離の所見を認めた.術後の冠動脈造影では冠動脈瘤は消失,順行性の血流が保たれ,グラフトの開存が確認された.