日本心臓血管外科学会雑誌
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[大血管]
非 Marfan 症候群に発症した Stanford A 型慢性胸部大動脈4腔解離の1手術例
陣内 宏紀力武 一久三保 貴裕古賀 佑一
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キーワード: A型解離, Marfan症候群, 4腔
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2018 年 47 巻 4 号 p. 183-186

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抄録

大動脈4腔解離の報告は少なく,非常に稀であるが,破裂の危険性は高いと考えられている.症例は70歳,女性.Marfan症候群を指摘されていない.他疾患の精査目的に撮影されたCTにて最大径68 mmの上行大動脈瘤を認めた.造影CTでは偽腔開存型のStanford A型の4腔解離を認め当科に紹介となった.発症時期は不明であるも,サイズや形態から破裂の危険性は高いと考えられ,手術予定となった.手術は超低体温循環停止下に上行大動脈人工血管置換術を行った.右心不全のため,人工心肺離脱が困難で右冠動脈へのバイパスを追加したが,それでも離脱が困難であり経皮的人工心肺(PCPS)サポート下に手術を終了した.術後3日目にPCPSを離脱した.その後は特に大きな異常なく,術後56日で退院となった.動脈瘤の病理組織では硝子化を伴った粥状硬化のみられる組織で,嚢胞状中膜変性の所見はなかった.4腔解離は非常に稀であるが,破裂のリスクは高く,早期の手術介入が必要と考えられた.今回われわれは,非Marfan症候群の4腔解離の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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