抄録
超小型試片の引張試験用ピンバイス型チャックを試作し, 人歯エナメル質試片の直接引張試験を行うとともにダイアメトラル圧縮試験も行って引張強さを求め, 前報で報告した圧縮特性と比較検討し, 次のような結果をえた. 1.エナメル質の引張強さは直接, 間接ともに, 圧縮強さと同様にエナメル小柱の方向の違いによる差が顕著であった. 2.平均引張強さは小柱軸方向Vで21.9MPa, 小柱断面の長軸方向Iで13.9MPa, VとIに直角方向Hで10.4MPaであった. 3.ダイアメトラル試験による間接引張強さはV方向で45.6MPa, I方向で37.7MPa, H方向で25.5MPaであり, 直接引張試験と同様な傾向を示したが, 引張強さの値は直接引張強さの2.1〜2.7倍であった. 4.試作したエナメル質引張試験用チャックは質量が2.4gと軽く, しかも球面座を設けることにより引張試験時に側方力が加わることなく十分有効であったが, 試片がチャック部で破断するなど改良の余地も残されていた.