発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
授業デザインがワーキングメモリの小さい生徒の授業態度に及ぼす影響:先行学習を取り入れた授業に焦点を当てて
水口 啓吾湯澤 正通
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2020 年 31 巻 2 号 p. 67-79

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抄録

本研究では,中学校の生徒を対象として,通常の理科の授業と,先行学習の特徴を取り入れた新しい理科の授業を比較することで,授業デザインがワーキングメモリ(WM)の小さい生徒の授業態度に及ぼす影響について検討した。WMの小さい生徒3名と平均的な生徒2名を各クラスで選出し,授業中の態度を観察した。新しい授業デザインでは,先行学習を参考として,授業冒頭での要点(まとめ)の教示,生徒自身が授業内容の理解度を評定する“自己評価”,要点(まとめ)の知識を深める“活用課題”,そして,教師と生徒との同時視写作業である“共書き”を実施した。その結果,WMの平均的な生徒は,授業デザインに関係なく,一貫して授業への参加が高かった一方で,WMの小さい生徒は,新しいデザインでの授業の方が,授業への参加が高かった。本研究を通して,WMの小さい生徒に限らず,すべての生徒が授業に積極的に参加するうえで,先行学習の特徴を取り入れた授業デザインが効果的に働くことを明らかにしたことで,授業全体に着目した学習支援方略を提示することが出来た。

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© 2020 一般社団法人 日本発達心理学会
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