2024 年 72 巻 2 号 p. 87-98
課題解決のために必要な知識を学習済みでありながら,その知識を適用せずに解決に失敗することがある。先行研究では,カテゴリールールの学習において,学習者にとって既知であった事例に対してはルールを適用するが,未知の事例には適用しにくい傾向があることが示されている(知識適用における既知性効果)。本研究の目的は,この既知性効果が他のカテゴリールールでもみられるかどうかを検証し,さらにその生起機序についての仮説を得ることであった。調査では,カテゴリーの既知性に加え,ルールを構成する「共通特性」に関する既有知識の有無がルールの適用に影響する可能性についても検討した。大学生を対象に調査を実施した結果,動物(研究1),種子植物(研究2)に関するルールのいずれにおいても既知性効果が確認された。さらに,研究2のアンケート調査の結果から,既知性効果の生起機序に関して,共通特性に関する既有知識に依存したものと,既有知識とは独立した要因によるものとの2種類が存在する可能性が示唆された。これを踏まえ,既知性効果の解消を目指した教授方略の開発が今後の課題として挙げられた。