2025 年 73 巻 2 号 p. 79-92
本研究では,自己決定理論に基づいた動機づけに着目して,部活動動機づけと学習動機づけの相互関係について検討した。中学生を対象に3時点の縦断調査を行い,部活動に所属している生徒565名を分析対象としてランダム切片交差遅延パネルモデルによる分析を行った。その結果,部活動における自律的動機づけは学習における自律的動機づけ,学習における自律的動機づけは部活動における自律的動機づけに対して,それぞれ正の影響を与えることが示された。そのため,部活動(学習)に自律的に取り組むことによって,学習(部活動)に対しても自律的に取り組むようになる可能性が示された。また,学習における統制的動機づけから部活動における統制的動機づけへの正の影響,学習における自律的動機づけから部活動における統制的動機づけへの負の影響もみられた。これらの結果は,中学校における部活動の意義を実証的に示すとともに,ある文脈における動機づけが,別の文脈での動機づけに転移する可能性を示唆するものといえる。