実験社会心理学研究
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組織体における下位組織集団の大きさがその集団のリーターシップ行動評定に及ぼす効果に関する研究
黒川 正流三隅 二不二
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1975 年 15 巻 1 号 p. 62-73

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抄録

本研究は, 企業組織体における監督者のリーダーシップ機能の部下による認知が, 職場集団のサイズによってどのような影響を受けるかという点を, 現場の質問紙調査資料によって明らかにしようとしたものである. まず, P-M論にいうリーダーシップP機能とM機能の特性について比較考察が行なわれた. そして, (1) 集団のサイズとP機能認知得点の関係, (2) 集団のサイズとM機能認知得点の関係, (3) 集団のサイズとP-M4類型別監督者の分布率の関係, について吟味が行なわれた. 吟味対象資料は, 延14の企業組織体で実施されたP-M調査である. 業種および職種は多様であった.
結果を要約すれば以下の通りであった.
1. 監督者のP得点と集団のサイズとの関係は, 正の相関を示す場合, 相関関係がきわめて低い場合, および負の相関を示す場合が見出され, 一定の関係は見出されなかった. 一般的にいって, サイズとP得点の相関は低かった.
2. 監督者のM得点と集団のサイズとの間には, 有意な負の相関関係を示す傾向が見出された. すなわち, 集団サイズの拡大が監督者のM得点を低下させる傾向が見出された.
3. 小サイズ集団には, 大サイズ集団にくらべてPM型の監督者がより多く見出された. M型の監督者のサイズによる分布率の差は見出されなかった. P型およびpm型の監督者は, 大サイズ集団に多く現れる事例が多かった.
4. 上記3の結果をM機能次元で分類すると, M得点の高い高-M型 (PM型とM型の両者) は小サイズ群に多く, M得点の低い低-M型 (P型とpm型) は大サイズ群に多く出現する傾向が見出された. また, P機能次元で分類すると, 高-P型 (PM型とP型) が小サイズ群に出現する傾向が認められた.
集団サイズの拡大にともなうリーダーシップP機能の上昇と低下現象, およびM機能の低下現象の発生条件についての追求が今後の課題として指摘された.

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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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