2009 年 33 巻 1 号 p. 31-40
本研究では,初年次に導入される協調学習が学生に与える効果を検証し,その効果の質について検討を行い,知見を帰納的に抽出することを目的としている.多様な学習背景を持つ初年次の大学生が1つの授業を中心にした大学生活の中でどのような学びのダイナミックスを描くのか,入学時より1年間,エスノグラフィ調査を実施した.その結果,1年生前期には人間関係を新しく構築しようとする親和動機が協調学習環境の授業にも働き,社会的コミュニティが学習コミュニティとして有効に機能した.後期では学生個々の学生生活が豊かになるにつれて親和動機は低下し,学習本来への内発的動機づけの有無によってクラスがグループ化した.グループ化したことで協調学習における他者の位置づけおよびその効果の質にも差異が認められた.