2023 年 47 巻 3 号 p. 455-464
本研究の目的は,中学校国語科の授業にプレゼンテーション活動を導入し,プレゼンテーション時に想定する受け手の差異が本の読みやその表現に与える影響を明らかにすることである.中学校1年生の2学級(80名)で行われた本の読みと魅力を交流させる授業を対象とし,読書経験を共有しない保護者を受け手として想定する「保護者条件」と,読書経験を共有するクラスメイトを受け手として想定する「クラスメイト条件」に各学級を割り当てた.条件間比較の結果,保護者条件の生徒は本の内容に関する情報をより多く探索,提示していたのに対し,クラスメイト条件の生徒は書誌情報をより多く探索,提示しており,授業を通して読みが変わったと報告する生徒数も多いことが示された.以上より,想定する受け手の差異は本の読み直しや魅力の探索,および表現方法に影響を与えており,授業目標に応じて受け手を変化させることで読みの変化を促進できる可能性が示された.