教育現場の個別最適な学び,協働的な学びの実現に向けて,教育データの有効活用が求められている.特に大学等の研究・教育機関では,教育実習等の教員養成の場での教育データの活用が必要とされる.本稿はセンサー技術で収集した教育データを活用して,教育実習生の授業力向上を目指す取り組みの第一歩としての実践報告である.画像や音声といった撮影情報の教育データ化にあたっては,人物の位置や発話者の検出のために人工知能が用いられた.得られた教育データ上には,教員と児童の発話比率の継時変化や教員の1秒ごとの立ち位置,児童全体の下向き率の変化などの項目が表出される.これらの項目ごと,もしくは項目の組み合わせから実習生の授業の有りようを解釈した.教育実習期間の序盤と終盤の2回の授業を比較することを通した本実践の成果としては,教育実習生の成長や課題点が客観的データとして浮き彫りにできた点,エビデンスに基づいた指導ができた点などが挙げられる.