日本森林学会誌
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論文
ウルシ植栽適地の土壌特性
小野 賢二 平井 敬三田端 雅進小谷 二郎中村 人史
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2019 年 101 巻 6 号 p. 311-317

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抄録

今後の国産漆の資源増産に対応して着実にウルシの植栽を増やすには,これまで植栽適地に関する既往データや知見が十分でないことから,それらを蓄積し適地判定に活用しうる土壌条件を検証可能な形で明示する必要がある。本論は漆産地4地域の生育良・不良地8林分で土壌の断面調査と理化学性分析を行って土壌特性と生育の関係を検討した。生育良好地土壌は不良地に比べ,肥沃度を指標する陽イオン交換容量が高く,根が伸長可能な有効土層が厚く,通気性や透水性を担保する土壌孔隙が多い傾向を示した。断面調査から,良好地は「林野土壌の分類(1975)」の適潤性土壌に該当する特徴を示すのに対し,不良地は総じて排水不良で,過湿なグライ土壌群や泥炭土壌群に相当する特徴を示した。以上は「ウルシは肥沃で,軟い表土が深く,排水良好で乾燥し過ぎない適潤な土地を好む」とする植栽適地の既往報告の要件と一致した。土壌酸度や土性は,本研究では既往報告と異なり,ウルシ生育との関係性が明確でなかった。不良地は全てにおいて,排水設備が未整備の水田と水が集中する斜面底部平坦面の牧草地からの転換林だった。ウルシ植栽の際には過湿環境になり易い立地を避けるべきで,地形的特徴や土地利用履歴にも留意する必要がある。

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© 2019 一般社団法人 日本森林学会
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