日本森林学会誌
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論文
中国・剣門関観光景区の本格整備に伴う地域住民の生業への影響
百村 帝彦許 思寒御田 成顕
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2020 年 102 巻 4 号 p. 232-238

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抄録

観光業の発展により,中国では観光景区周辺に居住する地域住民の生業に影響が出てきた。しかし観光景区の発展による地域住民への影響について,具体的かつ詳細に示された既往研究は限られている。そこで本研究は,中国・四川省に位置する剣門関観光景区の志公村を対象とし,観光景区の本格的な整備が周辺地域住民の生業に与えた影響を明らかにすることを目的とした。観光景区管理機関や地域住民からの聞き取り調査および参与観察を行った。観光景区内の開発のために一部住民の農地が収用された。農地を収容された住民は,その補償金や優遇政策によって観光関連事業への参入の機会を得て,農業から脱却するだけではなく,出稼ぎへの依存度も軽減した。一方,農地が収用されなかった住民は観光業参入への恩恵はなく,出稼ぎが主要な生業を維持し続けているが,農業への依存度も下がり賃労働も増えた。観光景区の発展による地域住民への影響は,農地の収用と適用される政策の有無により,大きく偏りがあることが明らかになった。

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