日本森林学会誌
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論文
冒険型パークによる森林利用の新展開
―フォレストアドベンチャーを事例として―
平野 悠一郎
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2020 年 102 巻 6 号 p. 358-367

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抄録

本稿は,新たな森林利用の事例としてフォレストアドベンチャーに注目し,日本での事業形態と発展経緯の解明を通じて,森林の有効活用に向けての可能性と課題を提示する。フォレストアドベンチャーは,森林内の立木のスリルや展望を味わえる高さに支点と足場を作り,安全器具を装着した来訪者がそれらを結ぶワイヤーロープ,板,梯子等を渡ることで楽しむ冒険型パークである。2000年代の導入以降,日本でも31カ所を数えるまでに発展を遂げた。必要面積は1 ha程度で,利用を支える強度の立木があれば展開可能であり,年間万単位が来訪する各パークの収益性は高い。各パークの運営は,フォレストアドベンチャー社の統括下に,直営とフランチャイズに大別され,個別には各種の地権者,自治体,他企業等が関わっている。また,自治体有,財産区有,私有等の森林にて,所有者自ら運営主体となる場合,別主体が委託・賃借等を通じて運営する場合もあり,多様な地域社会や林地所有の状況を柔軟に反映する形となっている。一方,制度的な基盤が不在の中,厳格な欧州の管理基準や統一的な部材調達・整備の仕組みを導入する等,安全管理面でのコスト負担も必要となっている。

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© 2020 一般社団法人 日本森林学会
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