日本森林学会誌
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論文
戦後の家庭料理に見られるマツタケ高級化の過程
―料理雑誌・漫画記述や採取者の意識から―
泉 桂子 佐々木 理沙
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2021 年 103 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

現在マツタケは生育場所となるアカマツ林の荒廃と減少によりその生産量が減少しているが,季節の食材として珍重される。料理雑誌・漫画を資料に用い,マツタケの高級食材としての評価は家庭料理においていつ頃定着したのかを明らかにした。1950年代後半から1960年代の消費者にとってマツタケは一面では惣菜用のキノコであった。料理書では他のキノコの代替や節約料理の材料となり,洋食や中華料理にも用いられ,多様な調理方法,切り方や加熱法が見られた。レシピサイトを用いて家庭料理におけるマツタケの代替物を調査した。限られた資料からではあるがエリンギ単独,またはマツタケ味の吸い物の素(1964年発売)と組み合わせたマツタケ代替レシピが確認された。さらに,岩手県内の山村を事例として,マツタケの採取や生育環境づくり,その後の稼得機会の獲得,調理,贈与,保存の楽しみや技術について聴き取り調査を行った。採取者は高齢となってもマツタケ採取に熱中し,現金収入や共食,贈与を楽しみに採取のためアカマツ林の採取地に入り込んだり,環境整備を行ったりしていた。これら採取者の調理は和風料理であり,保存には冷凍や真空パックを用いていた。

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