日本森林学会誌
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論文
原発事故が特用林産物の生産・流通に与えた影響と今後の研究課題
木村 憲一郎
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2021 年 103 巻 1 号 p. 13-21

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抄録

本研究では,政府統計資料や公開文書を用いて,福島第一原発事故が特用林産物の生産・流通に与えた影響を明らかにし,今後の研究課題を検討した。その結果,事故後の政策において,食品安全策としてのモニタリング検査件数は高止まりが続き,振興策は生産の再開や維持に主眼が置かれた。福島県と周辺4県では多くの品目が震災直後に生産量を大きく落とし,その後も回復の兆しはみられない。原材料を福島県産の原木に依存した栽培きのこや木炭の落ち込みは激しく,影響の範囲は西日本の一部にまでおよび,背景には営林活動の制限と指標値設定に伴う原木の供給低下があった。福島県と周辺4県の生産者数は急減し,販売価格の低迷と原木価格の高騰が進み,生産者の経営悪化が懸念された。原発事故の影響は長期に,かつ広範囲に及んでいる。今後は,原材料の流通実態の把握,販売価格低迷の要因分析,地域レベルの詳細分析が必要となる。

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