本研究では,全国の森林組合へのアンケート調査結果の分析により,森林組合から組合員への働きかけと森林組合と組合員を繋ぐ「境界連結者」の役割を担う「地区委員」・「地域組織」の実態と課題を明らかにした。その結果,近年の林産事業の増加に伴い組合員への働きかけを行う組合の割合は増加しており,地区委員・地域組織は,設置組合数や活動日数が減少しつつも回答組合の約4割に存在し,活動内容は,広報誌の配布や情報伝達,説明会の連絡などと多様性がみられた。その中でも,地区委員・地域組織が集落・団地内の事業の取りまとめを実施している組合では,組合員とのコミュニケーションが積極的に行われ,林産事業量も活発であった。その一方で,取りまとめ役が機能せず事業展開が困難化する組合も多く存在しており,二極化の傾向にあることが示唆された。地区委員・地域組織の機能向上や担い手の確保のためには,コミュニケーション頻度の向上,目標や情報の共有,メリットの還元が必要であり,地区委員・地域組織役員らが境界連結者として活躍できる条件を整備することが,森林組合の事業展開の上でも住民らによる自律的な森林管理を進めるためにも重要である。