2021 年 103 巻 3 号 p. 186-191
マツノマダラカミキリを駆除するための伐倒駆除では,上面被覆式が広く普及している一方で,全面被覆式を採用している地域もある。本研究では,被覆方式の違いによるくん蒸処理の効果を評価するために,土壌条件が異なる4試験地を設置し,被覆内のMITC濃度を測定するとともに,割材調査によって本種幼虫の死亡率を調査した。その結果,くん蒸剤投入後のMITC濃度の時間変化は試験地や被覆方式の違いに関係なく,投入2時間後または1日後にピークに達し,15日後にかけて徐々に減少した。また,本種幼虫の死亡率は,試験地や被覆方式に因らず高い水準を示した。ごく少数ながら材内で生存した幼虫は,坑道に木くずが詰められた蛹室内で発見され,それらの蛹室は相対的に他のものに比べて深い位置に作られていた。これらの結果から,全面および上面被覆式のどちらも十分な駆除効果があることが確認された。