ササ型林床の森林では,ササの繁茂が樹木の更新阻害要因となり,確実な更新のためにはササ抑制などの更新補助作業が不可欠である。閉鎖林冠下でササを抑制し,前生稚樹を確実に育成してから伐採すれば更新の成功が期待できると考えられる。しかし,伐採前に林冠下でのササ抑制を実施した事例は知る限りにおいてない。そこで,本研究では天然生ヒノキ林の閉鎖林冠下でチマキザサを抑制する野外操作実験を行って,その後伐採しても抑制効果が持続されるササ抑制法について検討した。ササ抑制の方法として,刈払いと抑制剤散布,これらを組合わせた5処理を行った。年一回各処理1 m2のササ地上部・地下部を採取し,現存量,稈数,地下部の貯蔵炭水化物濃度を測定した。刈払いを含む3処理では,チマキザサは最初の刈払いでほぼ再生能力を失い,その後数年で地下部が消耗して現存量が0となった。一方,抑制剤は徐々に地上部現存量を減らしたが,4年後には回復に転じ,地下部は一切抑制効果が表れず,ササを枯殺する効果はなかった。以上のことから林冠下で刈払いを行うことはササ制御に最適な方法と考えられ,前更作業によるヒノキ天然更新施業の可能性が示唆される。