日本森林学会誌
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論文
ササを欠く林分における抜き伐り施業によるヒノキ天然更新の成績評価
杉田 久志 九島 宏道三村 晴彦楯 直顕今村 正之早川 幸治森澤 猛酒井 武齋藤 智之西村 尚之星野 大介
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2021 年 103 巻 3 号 p. 207-214

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抄録

林床にササを欠くヒノキ林で抜き伐りによる天然更新試験が行われた長野県木曽地方の赤沢施業実験林において約30年後の更新成績を評価し,諸要因との関係を解析した。林床の光環境は1984~1986年の上木抜き伐りと下層植生除去により改善されたが,その後に悪化した。伐採約30年後のヒノキ更新木密度は実生(樹高0.5 m以下),稚樹(0.5~1.3 m),幼樹(1.3 m以上)あわせて約60 万本/haに及んだが,更新状況はばらつきが大きく,幼樹密度が3,000 本/ha以上のコドラートの相対頻度は38%であり,幼樹バンクがすでに成立している箇所と当面は成立困難とみられる箇所が混在していた。伐採3~5年後の初期実生密度は30年後の幼樹密度と有意な相関がなく,むしろ約15年後の実生密度が有意な相関を示した。更新成績は光条件や地形条件と有意な関係を示し,とくに伐採15年後の光条件との関係が明瞭で,伐採後の良好な光環境が一定期間継続することが更新成功をもたらすことが示唆される。以上のことから,初期実生密度による更新成績の予測は困難であったが,光条件や地形条件から予測することが可能と考えられる。

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