台風の高潮で形成された海岸林内の砂礫堆積物上にクロマツ苗を効果的に植える方法を検討するため,植え穴への園芸培土の混入量(なし,1 L,3 L),砂礫堆積物の厚み,およびシンクイムシ被害が植栽後1成長期の生残・成長に及ぼす影響を評価した。導電率やイオン濃度の測定から,台風から5カ月後の苗木植栽時にはその成長に影響するほどの塩分は砂礫堆積物中にはないと考えられた。一般化線型モデルによる解析により,園芸培土を施用しない場合には枯死本数が多いことが示された。苗高の成長量にはシンクイムシ被害が負の影響を及ぼし,根元径の成長量には砂礫堆積物の厚みとシンクイムシ被害が負の影響を,園芸培土の混入が正の影響を及ぼすことが示された。苗木1本当たり1 Lの園芸培土混入よりも3 L混入の方が直径成長量は有意に大きかった。砂礫堆積物上でクロマツ苗を健全に育成するには,シンクイムシ被害の防除とともに,堆積物が厚い場所ではより多くの園芸培土の施用が必要と示唆された。