マツ類のせん定がマツ材線虫病の罹病リスクに及ぼす影響を明らかにするために,2020年7月中旬に健全なアカマツ生立木6本の樹冠に比較的強度なせん定処理を行い(処理区),幹や枝条に形成されたマツノマダラカミキリ成虫の後食痕数および産卵痕数を無処理木6本(対照区)と比較を行った。せん定処理後の調査期間に形成された後食痕数は,処理区と対照区それぞれ木あたり4.7個と4.0個で,処理の影響は認められなかった。一方,産卵痕は処理区のみで木あたり1.8個形成され,処理の影響が認められた。これらの結果,性成熟したメス成虫はせん定箇所から放出される揮発性物質に産卵誘引された可能性が示された。せん定処理は成虫を産卵誘引し,マツノザイセンチュウをマツに伝播するする可能性があるため,本種成虫のセンチュウ保持数が多い時期を避けてマツ類のせん定を行うことで,マツ材線虫病の罹病リスクを軽減できる可能性がある。