日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
オサムシ科甲虫群集への針葉樹人工林の単木・群状保残伐および小面積皆伐の効果
上田 明良 伊東 宏樹佐藤 重穂
著者情報
ジャーナル オープンアクセス
J-STAGE Data 電子付録

2022 年 104 巻 6 号 p. 309-320

詳細
抄録

保残伐と小面積皆伐は伐採インパクトを軽減すると考えられている。これらの施業と全面皆伐後1~3年のトドマツ人工林および非伐採林において,魚肉ベイトのピットフォールトラップを各林分に1~3基約110日間設置して環境指標性が高いとされるオサムシ科甲虫を捕獲した。全伐採地の種構成は非伐採地と異なっていて,伐採が群集を変化させていた。侵入広葉樹の一部を非伐採で残す単木保残施業区の種構成は,皆伐区のそれよりも非伐採林に近く,保残量と森林性種捕獲数の間に有意な正の関係があった。0.36 haの人工林を残した群状保残施業保残区内の森林性種捕獲数と種数は林分によって大きく異なり,明確な傾向はみられなかった。約1 haの皆伐区と6~8 haの皆伐区の間で森林性種捕獲数と種数に違いはなかった。以上から,単木保残施業には伐採インパクト軽減効果があるが,群状保残施業と小面積皆伐についてはさらに検討が必要と考えられた。本研究と同じ試験地で,伐採1年後にベイトなしトラップを各林分20基,のべ21日間設置して行った別調査との比較では,本研究の種数がわずかに少なかったが,トラップ・日当たり捕獲数は同じであった。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本森林学会

この著作はクリエイティブ・コモンズのライセンスCC BY-NC-ND(引用を表示し,改変せず,非営利目的に限定)の条件の元で再配布・二次利用が可能なオープンアクセスです。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top