2022 年 104 巻 6 号 p. 321-329
本研究では1960~2019年を分析期間として,スギ製材用丸太の需要モデルを計量経済学的手法により推定した。スギ製材用丸太の需要に関してベクトル誤差修正モデルを構築し,単位根検定や共和分検定を用いて非定常変数同士の見せかけの回帰を回避しつつ,モデルを推定した。その結果,変数間の長期的関係を示すパラメータはいずれも符号条件を満たし,輸入丸太価格および製材労賃が5%有意水準で有意であった。これらのパラメータはいずれも非弾力的であったが,その推定値の大きさから,丸太需要量は長期的には輸入丸太価格および製材労賃から影響を受けやすいことが示された。他方,調整速度係数やラグ付き変数など,変数間の短期的な関係を捉えるパラメータの推定結果から,需要に関わる変数間に短期的な調整過程が存在することが確認された。また,ダミー変数は各変数について少なくとも一つは5%有意水準で有意となり,各変数のトレンドが経済状況などに応じて変化していることが明らかになった。