日本森林学会誌
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104 巻, 6 号
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論文
  • 上田 明良, 伊東 宏樹, 佐藤 重穂
    2022 年 104 巻 6 号 p. 309-320
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data 電子付録

    保残伐と小面積皆伐は伐採インパクトを軽減すると考えられている。これらの施業と全面皆伐後1~3年のトドマツ人工林および非伐採林において,魚肉ベイトのピットフォールトラップを各林分に1~3基約110日間設置して環境指標性が高いとされるオサムシ科甲虫を捕獲した。全伐採地の種構成は非伐採地と異なっていて,伐採が群集を変化させていた。侵入広葉樹の一部を非伐採で残す単木保残施業区の種構成は,皆伐区のそれよりも非伐採林に近く,保残量と森林性種捕獲数の間に有意な正の関係があった。0.36 haの人工林を残した群状保残施業保残区内の森林性種捕獲数と種数は林分によって大きく異なり,明確な傾向はみられなかった。約1 haの皆伐区と6~8 haの皆伐区の間で森林性種捕獲数と種数に違いはなかった。以上から,単木保残施業には伐採インパクト軽減効果があるが,群状保残施業と小面積皆伐についてはさらに検討が必要と考えられた。本研究と同じ試験地で,伐採1年後にベイトなしトラップを各林分20基,のべ21日間設置して行った別調査との比較では,本研究の種数がわずかに少なかったが,トラップ・日当たり捕獲数は同じであった。

  • 樋熊 悠宇至, 立花 敏
    2022 年 104 巻 6 号 p. 321-329
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では1960~2019年を分析期間として,スギ製材用丸太の需要モデルを計量経済学的手法により推定した。スギ製材用丸太の需要に関してベクトル誤差修正モデルを構築し,単位根検定や共和分検定を用いて非定常変数同士の見せかけの回帰を回避しつつ,モデルを推定した。その結果,変数間の長期的関係を示すパラメータはいずれも符号条件を満たし,輸入丸太価格および製材労賃が5%有意水準で有意であった。これらのパラメータはいずれも非弾力的であったが,その推定値の大きさから,丸太需要量は長期的には輸入丸太価格および製材労賃から影響を受けやすいことが示された。他方,調整速度係数やラグ付き変数など,変数間の短期的な関係を捉えるパラメータの推定結果から,需要に関わる変数間に短期的な調整過程が存在することが確認された。また,ダミー変数は各変数について少なくとも一つは5%有意水準で有意となり,各変数のトレンドが経済状況などに応じて変化していることが明らかになった。

短報
  • 比屋根 哲, 二子石 大智
    2022 年 104 巻 6 号 p. 330-335
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告は,小学生児童を対象とした野外体験プログラムの中で30分程度の森林に関する講話を実施し,講話の内容が児童の知識や行動にどのような影響を与えたかを検証したものである。調査対象は,岩手県の陸中海岸青少年の家が企画した「海の子野外教室」に参加した小学生児童29名である。同教室は海洋体験中心であるが,森林が体験できる沢登りも組まれている。調査では,沢登り体験の前日に児童に木と森林の話題を講話として提供し,その内容が沢登り体験時の児童の行動やその後の知識に与えた影響を,行動観察,アンケート調査,インタビュー調査で把握した。その結果,沢登り体験時には児童の講話の影響を受けた行動はみられなかったが,約50日後の保護者アンケートでは,約半数の児童が保護者に講話の内容を語っていることがわかった。

  • 伏見 愛雄, 来田 和人
    2022 年 104 巻 6 号 p. 336-342
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    クリーンラーチ挿し木苗生産では,採穂数が少なく,発根率が安定せず,得苗率が低いため,供給が不足している状況にある。一方で,人工的に制御された環境下では採穂数が増大し発根率が安定することが明らかになっている。そこで,本研究では事業生産のプロトタイプとなる閉鎖型育苗施設を設置して通年で挿し付けを行った。人工環境下で挿し付けをし,発根後,緩行性肥料が含まれる培土を詰めたコンテナ容器に移植したのち,温室で順化,冬季に野外で越冬させた。その結果,1年間継続して挿し付けをしても発根率は月間で有意な差は認められず(逸脱度分析),年間平均で81.1%であり,通年で安定した発根率を示した。ただし,その移植後の成長は挿し付け時期によって異なり(分散分析),時期によって得苗率が低くなるため(23~90%),低温順化方法や施肥方法の改善が必要であった。

  • 糟谷 信彦, 清野 薫風, 横尾 謙一郎, 隅田 明洋, 宮藤 久士
    2022 年 104 巻 6 号 p. 343-349
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2022/12/13
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    センダンは成長が早く,芽かきにより通直な幹がえられることから注目されており,そのため利用可能な木質バイオマスの地上部への配分の把握が重要となるが,センダンの地上部と地下部への重量配分の測定例はまだない。そこで本研究では,13年生センダンの地上部と地下部の各器官重を把握し,乾重配分および根系分布の特徴を明らかにすることを目的とした。2016年11月に熊本県の13年生センダン林にて6個体を調べると,地上部重合計において,幹,枝,葉はそれぞれ81.5,17.4,1.1%で,地下部/地上部比(R/S比)は平均0.25であり,個体サイズが大きいほどR/S比が大きく根の成長が優先していた。センダン根系に注目すると,本調査地の黒ボク土壌では垂下根が発達し一次根の54%(重量ベース)を占め,垂下根の方が水平根より長かった。各個体の根の最大深さは平均1.9 mであった。細根は林分内で一様に分布し,膨軟な表層土壌30 cmの中で深さ0~10 cmに多かった。

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