日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
105 巻, 11 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
論文
  • 大谷 達也, 米田 令仁, 福本 桂子, 山川 博美
    2023 年 105 巻 11 号 p. 329-337
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス

    スギ優良品種を使った下刈り省力の可能性を探るため,四国中央部の施業地に大規模な植栽試験地を設置し,3年間の苗の成長や雑草木との競合を調べた。一部の苗については植栽地点の土層厚と起伏変化の度合い(TRI, terrain ruggedness index)も評価し,林班の一部で下刈りをしないことによる下刈り面積低減の可能性も探った。特定母樹系統「高岡署1号」と在来系統「タノアカ」を比べると,高岡署1号が樹高,根元径,および枝張りのいずれも大きく成長したが,樹高成長を優先させるタノアカに対して樹高の差は顕著でなかった。苗の樹高成長は土層の厚い場所やTRIの小さい場所で大きい一方で,雑草木の植生高は土層厚やTRIと関係がなかった。3成長期目夏期に苗が雑草木から抜け出る確率を予測するロジスティック回帰分析では,高岡署1号の利用によって下刈り不要となる可能性が増すと示された。説明変数に土層厚やTRIを含めたところ,いずれも結果に影響する要因と認められた。スギ優良品種を使った下刈り回数の削減や,林班内で土層が厚いまたはTRIが小さい場所を判別することによる下刈り面積の低減が期待できる。

短報
  • 阿部 俊夫, 久保田 多余子, 小川 泰浩, 延廣 竜彦, 野口 享太郎
    2023 年 105 巻 11 号 p. 338-343
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル オープンアクセス
    電子付録

    釜淵森林理水試験地では2018年10月に2号沢(尾根沿い)と4号沢(谷近く)で作業道開設と小面積間伐が行われ,材積伐採率は2号沢3.5%,4号沢4.4%と推定された。小規模施業が多雪地域の水流出に及ぼす影響を明らかにするため,施業前後での月流出量の変化を解析した。基準流域1号沢との月流出量の比を比較すると,4号沢では6月の月流出量比が施業後に増加したが,漏水のある4号沢では月流出量比と月降水量に正の相関があり,施業後に降水量の多い年があったことが原因と推察された。8月の2・3号沢の月流出量比も漸増傾向であったが,施業とは別の原因と考えられた。さらに,厳寒期,融雪期,暖候期に分けて1号沢との月流出量の関係を解析したが,いずれの時期,流域でも施業前後で違いは認められなかった。今回の施業では作業道も含めて除去された樹木が極めて少ないため,水流出量に明瞭な変化が現れなかったと考えられる。

feedback
Top