日本森林学会誌
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論文
優良スギ苗品種や土壌・地形条件による成長差を利用した下刈り省力
大谷 達也 米田 令仁福本 桂子山川 博美
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キーワード: 土層厚, TRI, 高岡署1号, タノアカ
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 105 巻 11 号 p. 329-337

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抄録

スギ優良品種を使った下刈り省力の可能性を探るため,四国中央部の施業地に大規模な植栽試験地を設置し,3年間の苗の成長や雑草木との競合を調べた。一部の苗については植栽地点の土層厚と起伏変化の度合い(TRI, terrain ruggedness index)も評価し,林班の一部で下刈りをしないことによる下刈り面積低減の可能性も探った。特定母樹系統「高岡署1号」と在来系統「タノアカ」を比べると,高岡署1号が樹高,根元径,および枝張りのいずれも大きく成長したが,樹高成長を優先させるタノアカに対して樹高の差は顕著でなかった。苗の樹高成長は土層の厚い場所やTRIの小さい場所で大きい一方で,雑草木の植生高は土層厚やTRIと関係がなかった。3成長期目夏期に苗が雑草木から抜け出る確率を予測するロジスティック回帰分析では,高岡署1号の利用によって下刈り不要となる可能性が増すと示された。説明変数に土層厚やTRIを含めたところ,いずれも結果に影響する要因と認められた。スギ優良品種を使った下刈り回数の削減や,林班内で土層が厚いまたはTRIが小さい場所を判別することによる下刈り面積の低減が期待できる。

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© 2023 一般社団法人 日本森林学会

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