2023 年 105 巻 4 号 p. 118-122
2020年7月中旬,島根県西部のコンテナ苗生産地において,スギ当年生苗に灰色かび病の発生が確認された。同生産地ではガラス室内と露地の両方でコンテナ苗が育成されていたが,発病本数割合は露地では11%に留まったのに対し,湿潤な環境であったガラス室内では38%と高かった。病葉上に形成された分生子から1菌株を分離し,同菌株のDNAを抽出した。rDNAのITS領域の塩基配列についてBLAST検索を行った結果,同菌株はBotrytis cinerea Pers.と100%の相同性が確認された。スギ当年生コンテナ苗の枝葉に対して同菌株を8月下旬と11月下旬に接種し,20 ℃湿潤・暗黒下の条件において10日後の発病の有無を調査した。8月では灰色かび病の発病本数割合は94%と高かったが,11月では同割合は0%であった。成長期中の8月の苗は,11月の成長停止期の苗と比較して枝葉が軟弱であったことから,生育中の軟弱な苗は本病原菌に感染しやすいものと推察された。