変成岩の中でも石灰質片麻岩を多く含むことを特徴とする飛騨変成岩を基盤岩とする,富山県南西部の多雪山地に位置する4小流域を対象に,流出機構を明らかにするための調査を行った。流出はおもに雨水・融雪水のうち表層土壌を通過した水と,基岩浅層あるいは深層を通過した地下水から構成されている。各小流域の流出特性はそれぞれ,流出の各構成要素の組み合わせによって異なっていた。流域の上中流域で基岩浅層から,下流域で基岩深層からの地下水が見られた流域では,融雪期を除いて基底流出時の電気伝導度が上昇し,基岩浅層からの地下水が基岩深層からの地下水より早く減衰すると考えられた。表層土壌を通過した水と基岩深層からの地下水で構成された流域では,基底流出時の電気伝導度は大きい値で安定していた。一方,他の地質を基盤岩とする流域と比べた場合は,いずれの小流域とも降雨イベント時の降雨量に対する直接流出量の割合は小さく,最大流域貯留量が非常に大きいという結果が得られた。この結果から,飛騨変成岩を基盤岩とする小流域は,降雨や融雪水を素早く鉛直浸透し,基盤岩地下水として貯留し流出するという流出特性を持つと考えられた。