2023 年 105 巻 7 号 p. 233-238
コンテナ苗の基本用土として広く使われているヤシ殻ピート(ヤシ殻)は海外産である。運搬時に発生する高いCO2排出量を考慮すると,国内のより近隣で生産された用土の方が望ましい。そこで本研究では,地域産資材であるバーク堆肥と牛糞堆肥を用いてヒノキ実生コンテナ苗を育成し,これらの用土の性質や苗の成長特性をヤシ殻を用いた場合と比較し,代替用土としての可能性を検討した。ヤシ殻の輸送に係るCO2排出量は地域産資材の約5倍高い値を示した。地域産資材はヤシ殻と比べて培地の沈下量やpH,ECが有意に高かった。特に牛糞堆肥はECがヤシ殻よりも28.1倍高かった。バーク堆肥と牛糞堆肥はいくつかの成長特性においてヤシ殻に劣っていたものの,バーク堆肥は比較苗高やT/R比に関してはヤシ殻と遜色ない値を示した。成長特性を培地の性質で説明する統計モデルから,培地の沈下量やpH,ECが低いほど成長が良いことが示された。以上より,バーク堆肥を基本用土に用いて,より長い熟成期間を設ける,もしくは赤玉土や鹿沼土のような酸性の粒状土を混合して沈下量やpHを抑制すれば,CO2排出量の低い代替用土として使用できる可能性が示された。