2023 年 105 巻 7 号 p. 252-258
森林・林業白書に毎年掲載されているナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)被害材積の統計値は,被害対策の基礎資料となっているが,値の検証はされていない。そこで,2004~2011年にかけてナラ枯れが多発した富山県の民有林の統計値を検証した。この値は,林道等から目視でカウントした枯死樹冠数に基づいており,ナラ枯れが発生した2002~2017年度の合計は12万 m3だった。これに対し,森林生態系多様性基礎調査の101プロットにおける,ナラ枯れ多発前と多発後の2時期の毎木調査データを用いて推定した被害材積は178±81万 m3(点推定値±95%信頼区間)だった。このことから,統計値は過小評価であると示唆され,目視調査では確認できない部分があることが主因と考えられた。富山県の民有林におけるミズナラとコナラの材積被害率はそれぞれ57,9%と推定され,ナラ枯れが地域の森林資源に強い影響を与えたことが明らかとなった。