日本森林学会誌
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林相が異なる森林における強度間伐施業後の土砂移動量
土井 裕介 石井 亘尾形 信行相子 伸之
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2024 年 106 巻 5 号 p. 117-127

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抄録

林相の違いが強度間伐後の土壌の表面侵食に及ぼす影響を明らかにするため,スギ林,ヒノキ林,広葉樹林において本数間伐率約50%の間伐区と無間伐区を設置し,処理後3年間にわたり表面侵食の指標である細土移動レートと林床被覆率を測定した。スギ林は,豪雨やイノシシによる掘り返しによるリターの流出に伴い細土移動レートが一時的に上昇したものの,両区ともに林床被覆率は60%以上と高く,細土移動レートは低い値で推移した。ヒノキ林は間伐直後に間伐区の細土移動レートが高まる傾向が見られたものの,下層植生被覆率が高まるにつれて,両区の差は小さくなる傾向を示した。広葉樹林は両区ともに間伐後1年目に林床被覆率が60%以上と高く,細土移動レートは低かったものの,間伐後2年目以降イノシシによる表土攪乱の頻度が他の林相よりも高まり,細土移動レートは1オーダー上昇した。以上からスギ林と広葉樹林は林床被覆率が高いことで表面侵食に対する耐性が高く,野生動物の影響が無い場合はその特性が強度間伐後も維持されると考えられた。一方でヒノキ林は,強度間伐後に林床被覆率が回復するまでの間は,表面侵食量が増大する恐れが高いことが示唆された。

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© 2024 一般社団法人 日本森林学会

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