日本森林学会誌
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老齢大径木の樹冠の大きさと可塑性
―真鶴半島の針広混交林「お林」の事例―
正木 隆 佐藤 保八木橋 勉櫃間 岳設樂 拓人
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2024 年 106 巻 5 号 p. 140-144

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抄録

神奈川県真鶴半島の老齢針広混交林「お林」で,幹の胸高直径(DBH)約60~200cmのクロマツ,クスノキ,スダジイを対象に樹冠幅と樹冠偏心距離を計測した。樹種ごとの樹冠幅の最大値はクロマツの1,570cmからクスノキの3,200cmにおよび,樹冠偏心距離はクロマツの550cmからクスノキの1,050cmに及んだ。樹冠幅は,クロマツとクスノキではDBHとともに増加する傾向を示した。樹冠偏心距離は,クロマツではDBHとともに減少する傾向を示し,広葉樹2種では逆に微増する傾向を示した。広葉樹2種では樹冠幅はDBH成長量と正の相関を示し,樹冠幅は老齢・大径の広葉樹の活力を指標すると考えられた。緩傾斜の本調査地では,斜度と広葉樹の樹冠偏心距離の相関は不明瞭であった。老齢・大径の広葉樹林の復元を目標に若齢林を適切に管理するには,樹冠幅や樹冠の可塑性の情報をさらに収集する必要があることを指摘した。

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© 2024 一般社団法人 日本森林学会

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