2024 年 106 巻 6 号 p. 172-178
収穫予測は持続的な森林経営のために重要である。単木レベルの収穫予測では,林内の個体間競争を表現した競争指数を組込んだ成長モデルが検討され,立木間の距離を用いる距離従属モデルと用いない距離独立モデルの有効性が検証されてきた。スギでは両モデルの予測精度は同等であるといわれているが,ヒノキについての検証は不十分であった。本研究では,間伐強度の異なる四国地方のヒノキ林を対象に, 距離従属競争指数4種と距離独立競争指数5種を単木直径成長モデルに組み込み予測精度を評価した。さらに,モデルの精度評価の結果から収穫予測への応用について考察した。その結果,距離従属モデルではMD(平均距離),距離独立モデルではBR(断面積比)の当てはまりが良く,距離従属競争指数よりも距離独立競争指数の方で当てはまりが良い傾向がみられた。平均距離と断面積比を変数とする直径成長モデルによってヒノキの直径成長量を推定したところ,異なる間伐強度であっても同等の予測精度を示していた。これらの結果から,距離独立競争指数をモデル内に組込むことでヒノキの単木直径成長を簡易に予測できる可能性が示され,収穫予測へ応用できると考えられた。