2024 年 106 巻 8 号 p. 245-250
主伐の増加に伴い,さし木苗の不足が懸念されるため,さし木苗生産においては採穂木当たりの採穂数を増やし,育苗期間を短くすることが求められる。穂を短くすることで採穂数の増大が見込めることから,本研究では短い穂から1年でさし木コンテナ苗の育成が可能かを検討するため,10~30 cmの穂を鹿沼土にさしつけ,発根後ただちに肥料入り用土を充填したコンテナへ移植し1成長期育成する試験により,穂長と1成長期後のコンテナ苗の苗高の関係を調査した。1月下旬にさしつけた穂は,電熱温床による加温があれば3月中旬以前,加温なしでは4月下旬から発根した。線形混合モデルによる解析の結果,さしつけから発根までの日数が短いほど,また穂が長いほど苗高が大きくなる関係が示された。移植日から成長可能日数を推定し,苗高との関係を解析した結果,平均苗高30 cmのコンテナ苗を得るためには,10 cmの穂では5月中旬までに,15 cmの穂では6月下旬までに移植が必要と推定された。10~15 cmの穂は定法の穂より短く採穂数の増大が見込めるため,本研究で示した方法でさし木苗の生産を行うことにより,さし木苗の増産に貢献できると考える。