2025 年 107 巻 6 号 p. 143-147
ナラ枯れは,カシノナガキクイムシが媒介する樹木伝染病であり,日本各地で拡大の一途をたどる。人的や経済的被害の防止策の一つとして,ナラ枯れ被害木の伐採は重要であるが,その処理には多くの労力を要する。本研究では,短木丸太を林内に放置する手法の妥当性を検証した。埼玉県の調査地において,2022年に被害が確認されたコナラを伐採した後,異なる長さに切断した丸太を林内に放置した。翌年5月に供試丸太を羽化トラップ内に設置し,6,7,8,11月の各月に1回,個体を回収した。1 m3当たりの個体数を比較した結果,100 cm区で脱出した個体数と比べて,30 cm区と15 cm区で脱出した個体数は有意に少なかった。100 cm区では,6月と7月に多くの成虫が回収された。本研究により,被害木の処理に要する労力を考慮すると,30 cm以下に短くすれば林内に被害丸太を放置する方法も有効であると考えられる。