再造林放棄地は森林の生態系サービスに影響を及ぼす複雑な問題であり,その実態把握が求められる。しかし,再造林放棄と判定された地点について,その後植林ないし天然更新されるか長期的な評価はなく,かつそれらの立地要因も検証されていない。本研究では九州本島で1998~2008年に発生した1602点の再造林放棄地を対象に2022年時点での植林および天然更新の有無をリモートセンシングデータの目視判読により評価した。さらに植林および天然更新に影響を与える立地要因を統計解析により検証した。その結果,再造林放棄地の内20%は植林され森林として成立し,61%は天然更新した。皆伐直後に植林された地点を合わせると,皆伐地の95%が森林として成立した。統計解析の結果,ニホンジカの生息密度が低い,または高標高の再造林放棄地はその後に植林されやすく,急傾斜,広葉樹林との距離が近い,低標高といった場所では天然更新しやすかった。ニホンジカの生息密度が高い,緩傾斜,広葉樹林から遠いといった条件の再造林放棄地は植林も天然回復もしない確率が高まるため,これらの地点では再造林放棄地の積極的な管理が求められると結論付けた。
ナラ枯れは,カシノナガキクイムシが媒介する樹木伝染病であり,日本各地で拡大の一途をたどる。人的や経済的被害の防止策の一つとして,ナラ枯れ被害木の伐採は重要であるが,その処理には多くの労力を要する。本研究では,短木丸太を林内に放置する手法の妥当性を検証した。埼玉県の調査地において,2022年に被害が確認されたコナラを伐採した後,異なる長さに切断した丸太を林内に放置した。翌年5月に供試丸太を羽化トラップ内に設置し,6,7,8,11月の各月に1回,個体を回収した。1 m3当たりの個体数を比較した結果,100 cm区で脱出した個体数と比べて,30 cm区と15 cm区で脱出した個体数は有意に少なかった。100 cm区では,6月と7月に多くの成虫が回収された。本研究により,被害木の処理に要する労力を考慮すると,30 cm以下に短くすれば林内に被害丸太を放置する方法も有効であると考えられる。