抄録
シカの生息密度が高い地域内で強度間伐 (本数間伐率47.5∼71.2%) を行った針葉樹人工林に獣害防護柵を設置し, 間伐後の広葉樹侵入に及ぼすシカ採食の影響を調査した。獣害防護柵内では先駆種を中心とする多数の広葉樹が間伐後に侵入し, その生残率は高く, 樹高成長も良好であった。しかし, 柵外では柵内よりも広葉樹の侵入が少なく, 生残率も低かったため, 2年後まで生残した個体はわずかであった。このことから, 柵外ではシカの採食により間伐後の広葉樹侵入が強く阻害されていると考えられた。シカ生息密度が高い地域において, 人工林の針広混交林への誘導を目指すには, 強度間伐を行った場合にシカ採食が顕在化する生息密度の解明と施業地へのシカの集中を防ぐ簡便な手法の開発が必要である。