日本森林学会誌
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総説
森林甲虫と酵母
遠藤 力也
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2012 年 94 巻 6 号 p. 326-334

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抄録
森林に棲息する甲虫には多様な酵母が関連している。糸状菌に比べるとあまり注目されてこなかったが, 甲虫の生活史に密接に関連していると考えられる酵母が存在する。そういった酵母は, 森林生態系の「重要だが見過ごされてきた」構成員といえるだろう。本稿では森林に棲息する甲虫のうち9科と1グループ (タマムシ科, ナガシンクイムシ科, カミキリムシ科, ハムシ科, クワガタムシ科, ケシキスイ科, ナガキクイムシ科, オサゾウムシ科, キクイムシ科, キノコムシ類) を取り上げ, それらの関連酵母について紹介するとともに, 酵母-甲虫の共生関係を論じる。昆虫に関連するものを含めて自然界から見出される酵母の研究は, 主に分類・同定や種の記載に終始するきらいがあった。しかし分子生物学的手法の発達や遺伝情報のデータベースの整備によって, 酵母の種の識別は容易になりつつある。こういった背景から, 甲虫やその関連基質から見出される酵母の研究は, 関連生物の相互関係をより包括的に解き明かすものになっていくだろう。
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© 2012 一般社団法人 日本森林学会
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