森林再生の初期段階とその後約60年が経過して森林再生がある程度進んだ段階で, 出水時のピーク流出係数 (fp) が森林再生に伴ってどのように変化したのかを定量的に解析した。東京大学演習林生態水文学研究所穴の宮流域を対象とし, 解析期間を1936∼46年の11年間 (前期) と1990∼2011年の22年間 (後期) として, fpと雨の降り始めからピーク降水量の開始時刻までの降水量 (Pi), 流域の湿潤状態の指標である初期流出量 (Qi) との関係を調べた。森林状態に関係なく, Pi が増加するとfpも増加する関係にあることがわかった。一方, fpとQiには明瞭な関係はなかった。同じPiに対するfpの最大値は, Piが0, 25, 50 mmのとき, 後期は前期のそれぞれ53, 45, 42%に減少することがわかった。森林が回復した後期では, 総降水量が401.5 mmの東海豪雨においても, fpは1を大きく下回る0.58にとどまった。