日本森林学会誌
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論文
戦後の専門高校「森林科学」(育林分野)関連科目の変化と課題
井上 真理子大石 康彦
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2016 年 98 巻 1 号 p. 11-19

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抄録
戦後の専門高校「森林科学」関連科目(育林分野)について,学習指導要領と教科書をもとに教育目標と内容の変化を分析した。科目名は,「森林生産」から「育林」,「森林科学」へと変わってきた。科目の目標は,森林育成の知識と技術の習得を基本に,森林の生産性を高めることから,1980年代に森林保護や多面的機能が加わり,2000年代の「森林科学」では,森林の保全と利用を図ることになった。教育内容を整理すると,「概論」(森林と育林),「森林の環境」(森林生態,林木の特性と生育環境),「森林の育成」(育苗,育種,造林,保育,保護),「社会との関係」(特用樹栽培,風致または総合的な利用)の4分野10項目が挙げられた。教育内容の変化には,生産性を高める育林の実務的な知識や技術から,森林生態の内容が増え,森林の役割や育林の意義や社会との関係が加わったことがみられた。木材生産を中心とした内容から,多面的機能を含む森林の保全,利用へ変化した傾向は,科目「森林経営」と共通していた。今後の課題には,育成すべき人材像を踏まえて2科目の内容の再検討を行い,「森林科学」の内容を再構築することが挙げられた。
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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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