日本森林学会誌
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論文
植栽樹種の違いが同一斜面のヒノキ,スギ,アカマツ人工林の表土移動に及ぼす影響
渡邉 仁志井川原 弘一茂木 靖和横井 秀一平井 敬三
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2016 年 98 巻 5 号 p. 193-198

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抄録

急傾斜面の林地における植栽樹種の違いが土壌侵食に及ぼす影響を明らかにするために,同一斜面上に隣接し,立地や管理の条件が等しい約40年生のヒノキ,スギ,アカマツ人工林の表土(細土,石礫,リター)移動量を比較した。降水量1mm 当たりの細土,石礫,リターの移動量(移動レート)はヒノキ林で高かった。スギ,アカマツ林の地表面は,年間を通じて下層植生またはリターによって被覆されていた。これに対し,ヒノキ林の下層植生やリターによる被覆率は常にスギ林やアカマツ林より低かった。細土移動レートは地表面の被覆率が高いほど低下した。植被率の低下に加えリター被覆率の低下が生じやすいというヒノキ林の特性が,ヒノキ林下における表土移動に影響を及ぼしていると考えられた。ヒノキ林ではリターによる地表面の被覆効果は高くないことから,下層植生の乏しいヒノキ人工林において表土移動を低減させるためには,光環境を改善し下層植生を維持することが必要である。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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