日本森林学会誌
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論文
林齢の異なる小面積林分からなる森林における腐肉食性甲虫(腐肉食性シデムシとコガネムシ上科糞虫)群集の反応
上田 明良
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2016 年 98 巻 5 号 p. 207-213

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抄録

簡易な方法で捕獲した腐肉食性甲虫 (シデムシ科とコガネムシ上科食糞群) 群集の森林環境に対する指標性を評価するため, 2012年に熊本市内の林齢が異なる小面積林分からなる森林内の15林分で魚肉を誘引餌としたピットフォールトラップを1個設置した。その結果, 13種7,667個体の腐肉食性甲虫が捕獲された。種数,総捕獲数, シンプソンの多様度指数と6種の捕獲数は, 林齢と有意な正の関係を示した。また, 林分を林齢に伴う3グループ (新植地, 若齢林と壮齢林) に分け, 指標種分析を行ったところ,有意な指標種が若齢林に1種, 壮齢林に7種みられた。非計量多次元尺度構成法 (NMS) による各林分群集の座標付けにおいても, 若齢林の1座標を除くと, 林齢に伴う3グループは分かれた。以上の結果から,今回の方法で得られた腐肉食性甲虫群集は, 小面積林分がモザイク状に存在する森林において, 環境に対して優れた指標性を示し, 林齢に伴う森林環境の変化に反応していると考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本森林学会
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